DATE : 2007/06/21 (Thu)
弁護団が変更になった際に、今後の立証方針がいくつか提示されていた。
①目撃者及び被害者の証言が信用できないことを被害者の供述・目撃者の証言に基づく現場再現映像によって明らかにする。
②植草一秀氏の手の付着物が京急職員の制服の繊維の可能性があることを示す。
③植草氏のスーツの付着物の鑑定結果の開示を求め植草氏が被害者に密着していたとの被害者証言を否定する。
など、何項目か立証方針が示されていた。
この中で①の再現映像だけは数種類作られた中の植草氏供述に基づくものだけが公開されたが、
残りはどうなっているのか。未だに公開されないままです。
こちらも不同意となっているのでしょうか。
残り②、③などは次回の公判でも出てくるような気配が無い。
弁護団がこの立証方針を変えているとは思えないので当然証拠申請しているものと思う。
やはりこちらも検察官不同意ということなのか。
②、③に関しては非常に重要な証拠ではないだろうか。
富山の冤罪事件の再審が開始されたが、驚くべきニュースが出ていた。
無理やり見取り図を書かされたり、取調べで自白を強要されたり・・・
密室での様々な強要行為を富山の冤罪被害者は語っているが、
弁護側が申請した、『担当した取調官の証人尋問』を
『必要性なし』として行わないことが決まったというのだ。
不正を見て見ないふりをする裁判官とは一体何のためにいるのか。
私には全く理解できない。
②に関しては科捜研の【あの】曖昧な鑑定で済まされてはたまらないと思う。
今までの繊維鑑定をした事件を見ても民間企業と科捜研とで食い違う結果が多いのは事実だ。
ひとつの繊維で違った鑑定結果など本来出るわけが無い。
これは犯人に仕立て上げようとする不正の鑑定の可能性があるのだ。
③などは検察側が提示していないものだ。ついていない可能性が大きい。
密着していたなどと言っている証言が否定される鑑定なのです。
こちらも検察側により隠されているはずだ。
この種の裁判では『合理的疑いを挟む余地がないほどに証明されない限り被告人は無実』という基本ルールが適用されているとは思えない。『被告が無実の証明をできなければ有罪』とルール変更されているように思える。一方の話だけを聞いて判断できるだろうか。片方の意見を聞いたらもう片方の意見も聞かなければならない。
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(1)<業界A>
◎燃焼による鑑別・・・徐々に近づけながら燃え方を観察。
◎比重による鑑別・・・比重のすでに明らかな分離液に細かく切断し繊維を散布して、浮沈を観察する方法。
◎顕微鏡による観察・・・倍率150〜500で繊維の側面及び断面の形状を観察する方法。
◎化学的鑑別・・・染料や薬品による着色性や溶解性及び特殊成分の検出など。
◎赤外線吸収スペクトルによる鑑別・・・赤外分光光度計で赤外線吸収スペクトル図と比べ、判断する方法。
(2)<業界B>
◎糸・・・糸長、番手/引張強さ、伸び率/より数/水分率/混用率
◎織物・・・巾、長さ及び重量/組織、密度/水分率/染料鑑別/繊維鑑別/絵表示指示/ホルマリン
◎物性・・・引張強さ、伸び率/引裂強さ/破裂強さ/磨耗強さ/滑脱抵抗力/縫目強さ/寸法変化率
◎染色堅牢度・・・洗濯/汗/摩擦(乾湿別)/耐光/ドライクリーニング/塩素漂白、流水塩素/水道水、海水等
◎その他
(3)ある県の検査機関の場合
12. 特定分野試験(繊維)・・・繊維(糸、布及び加工布に限る。)
ア 物性試験
イ 組織分解
ウ 繊維鑑別
エ 混用率試験
オ 編成試験
カ 燃焼性試験
キ 加工布性能試験
ク 染色加工試験
ケ 染色堅ろう度試験
コ 繊維外観観察
サ 繰返洗濯試験
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業界によって、扱うモノが異なるので、重視する項目も多少異なるようです。でも「どこにでもある物質だから、対象外」のような基準は無さそうです。
これらの民間の検査項目と結果なら「同一物質・違う物質」という評価は、かなり信憑性が高そうです。
★科捜研の鑑定って???
民間の場合「各項目につき、一点いくら」という料金設定になっています。検察の主張する「繊維鑑定結果」というのは、上記の(3)の検査機関で当てはめると「コ、繊維外観観察」つまり、見た目の形状と色で「似ている」と判断しているようです。(つまり、植草さんが犯人だという根拠)
研究者は「赤いネクタイに青い繊維は無いから」とか「表示がそうなっていた」と、成分分析などの科学的な方法ではなく、見た目だけの判断なのを本人が証言しています。
この、見た目の検査は、上記の料金のランクで言うと「最も簡単な検査」に入ります。料金的に一番安いのは、「ケ」の中の一つ「その他染色堅ろう度試験」(730円)で、植草さんの繊維鑑定の根拠である「コ、繊維外観観察」は、その次に安い料金(1,050円)でした。つまり、20程もある鑑定方法のうち、最も簡単な(しかも、曖昧な結果しか出ない)鑑定です。
それ以上の精密さは必要無い? いいえ、精密な検査結果は「証拠として出せない」という事でしょう。社会的にも話題になった事件の「唯一の物証」です。決して経費削減のために、千円程度しか予算が無いハズは有り得ない。つまり検察としては、
精密な『繊維鑑定』では、植草さんが『無罪』という結果が出る
↑
「証拠隠滅」も「捏造」と同じです。
『都合の悪い、鑑定結果を隠している』・・・これは富山の冤罪で、図面をむりやり書かせた行為と同様に、恣意的な行為です。鹿児島の冤罪でも、無実を証明する「供述のメモ」を検察が隠したことも発覚しています。・・・担当検察官が「命をかけて隠し通す」と、そっちに命を懸けたらしい。
検察さん、大事な証拠は隠さないように。
この再審は、この方が無罪であることを確定させるための裁判です。その目的しかありません。
確かに、通常の刑事事件ならば、取調官による自白の強要があったなどということが、自白の信用性で問題になったりします。
しかし、この再審はいわば形式的なものであり、検察側が無罪を主張しているぐらいですから、この方を無罪にするためには、証人を呼んで尋問するなどは「必要ない」ことになるのでしょう。
取調官を訴えたければ、あらためて告訴なり提訴なりしてください、ということでしょう。いずれにせよ、そのハードルは高く、立証も困難でしょうが。
取調官の違法行為等については、追及するなら別の裁判で、という趣旨ではないかと思います。
なるほど。
私のような裁判を知らない一般市民には全くそういう考えは及びませんでした。ありがとうございます。
大事なポイントは、以下の二つ
・出来る限り「冤罪」という悲劇を少なくすること。
・残念ながら、冤罪が判明した時、同じミスを犯さないようにすること。
議論になっている「取調べの可視化」が実現されれば、かなり「減らす」事には効果があると思います。(出来れば、完全な可視化が望ましい)
次に、同様な悲劇を繰り返さない為に「どうして、その冤罪が生まれたのか?」を正しく分析・検証する必要があると思います。
「富山の再審」では、この一番大事な「取調室での出来事」に関して公判上では取り上げない判断をされたようです。この裁判所の意図は「捜査側・起訴側の方で、キチンと反省しろ(武士の情け?)」というメッセージかもしれません。
冤罪を生み出した取調段階での違法な行為を「あえて公判では取り上げない。だけど・・・」と、起訴する側に「いい加減な証拠で起訴するな」という警告の意味もあるのかもしれません。(ある種の身内意識が働いて、出来れば公にしたくないのでしょう。)
今後は(冤罪に敏感になっている)世論も無視出来ないので、裁判所も「違法な取調べ/証拠の捏造/見込み捜査/自白の強要」などの可能性がある場合、従来よりもシビアに判断されると思います。
あっ、あと、検察側とはいえ「ウソの証言をした証人」に対するチェックは厳しくなるでしょうね。